回転翼航空機(マルチローター)型のドローンの特徴と運用方法について
この記事では「無人航空機の飛行の安全に関する教則」から「6.3.3 回転翼航空機(マルチローター)」部分をわかりやすく解説しております。
回転翼航空機(マルチローター)の特徴とは?
メリット
- その場で離着陸できる。
- 飛行の安定度が高い
- 360度その場で自由に飛行可能
- 現在もっとも種類が多く、用途に応じて選べる
- 自由度が高いので、空撮や測量に向いている
デメリット
ドローンと聞いて真っ先に思い浮かべるのが、このタイプ。
飛行機型やヘリコプター型と異なり、「マルチローター型」と呼びます。
回転翼航空機(マルチローター)型のドローンは複数のローターを機体に備えています。
ローターを回転させることによって揚力を得て垂直上昇します。
さらにフライトコントロールシステム、様々なセンサーによって、安定した飛行を行うことができることが特徴です。
マルチローター型の種類
機体 | プロペラ枚数 | 名称 | 大きさ | 飛行の安定性 |
4枚 | クワッドコプター | 小型 | 普通 | |
6枚 | ヘキサコプター | 中型 | よい | |
8枚 | オクトコプター | 大型 | より良い |
別記事でも解説しましたが、もっとも主流は4枚羽のドローンですが、枚数が増えることで呼び方が変わります。
基本的に羽の枚数が増えるにつれ、飛行の安定性は増します。
しかし羽の枚数が増えると機体も大型化する傾向にあり、メンテナンスも大変になります。
使用目的に応じて、ドローンを選定するとよいでしょう。
マルチローター型のドローン
100g未満のトイドローン|室内練習にオススメ!
価格帯は5000〜から様々な種類のトイドローンが発売してます。
自宅で練習するのに向いてますので、ドローンに興味を持ったらここからスタートすることをオススメします。
注意点はamazonなどで購入する場合、100g以上のトイドローンを外で飛ばしてしまうこと。
おもちゃに見えますが、100g以上は航空法上、ホビーではないので屋外で飛ばすと規制対象になります。
最悪刑事罰を受ける可能性がありますので、購入する際は100g未満で自宅内でのみ飛ばすようにしましょう。
軽いドローンは外では微風でも流されてしまいます。
DJIの空撮機
マルチローター型のドローンといえば、DJIの空撮機が最も主流です。
100g以下のホビードローンから始めた人は、その飛行の安定性にびっくりすると思います。
空撮機で絶景を撮影
重量1kg未満の空撮機でもまるで映画のような美しい映像を撮影できます。
マルチローター型の飛行原理
マルチローター型の飛行原理は別記事で詳細に解説してます。
詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
マルチローター型 離着陸時の注意事項
離陸
マルチローター型ドローンは高速回転するプロペラから揚力が発生、揚力が重力を上回ること離陸できます。
重量1.5kgのドローンは離陸直後から対地高度1m程度までの間は、回転翼から発せられる吹きおろしの気流が地面付近で滞留し、揚力が増す現象「地面効果」が起きやすくなります。
地面効果の影響を受けると機体が安定しません。
速やかに一定高度まで上昇させ、ホバリングさせましょう。
ホバリング
ホバリングとはドローンを一定の高度と位置を継続的に維持することです。
近年のドローンは様々なセンサーによって、特にコントローラーで操縦しなくても、空中でピタッとホバリングを維持してくれます。
ホバリング状態のドローンはプロペラによる揚力と、重力のバランスが維持している状態です。
回転翼航空機(マルチローター)が飛行時に高い安定性を確保するため、
- 方位センサ
- 地磁気センサ
- GNSS 受信機
- 気圧センサー
など高度な技術が用いられています。
ただし操縦者自身、各種センサーに頼らない状態でも手動操作によるホバリングできる技術力が必要になります。
ドローンの専門用語については以下の記事で解説しております
「4.4 機体の構成」についてわかりやすく解説した内容になります。
降下
機体を降下させるには、スロットル操作を徐々に弱めて揚力を減少させる必要があります。
機体を垂直降下させる時に、吹きおろした空気が再び吸い込まれ、回転翼の上下で空気の再循環が発生し急激に揚力を失う現象「ボルテックス・リング・ステート」が発生する。
降下の際は水平方向の移動を合わせて操作することで墜落防止対策となる。
着陸
降下を継続し着陸を行う際には、対地高度に応じて降下速度を減少させる。着地後にコントローラーでローターの回転を停止させる。
GNSSを使用しない操作| ATTIモードでの操縦
緊急時にはGNSS受信装置による機体位置推定機能を使用しない操縦技術が必要になります。
通称ATTIモードですが、この訓練も十分にしておきましょう。
オススメは自宅でのトイドローンか、シミュレーターで十分に訓練すること。
十分に訓練した上で、実際の現場で使うドローンでも練習を重ねておきましょう。
GNSSを使用しないホバリング
DJIなど優秀な民生機では、多少の風でもピタッとその場でホバリングしてくれます。
しかしホバリング中にGNSSを無効にすると、風の影響で水平位置が不安定となります。
エレベーターやエルロン操作でドローンがその場で安定したホバリング飛行を維持させる技術が必要になります。
その場1分以上ホバリングできるようにしましょう。
GNSSを使用しない着陸
上述の操作によりホバリングを安定させながら、スロットル操作により機体を降下させ着陸させる。
機体を垂直降下させる時に発生する「ボルテックス・リング・ステート」や、「地面効果」を抑制するために、細かくエレベーターやエルロンを行いながら、丁寧にドローンを着陸させましょう。
ドローンの自動操縦と手動操縦、それぞれの特徴と使い分けについては以下の記事をご覧ください。
「5.2.2 手動操縦及び自動操縦」についてわかりやすく解説した記事になります。
一等|マルチローター型ドローンと飛行計画とリスク軽減策
① 離陸及び着陸
- 機体と操縦者、補助者及び周囲の物件と安全距離を確保。
- 地面効果範囲内の飛行時間を短くする。
マルチローター型はヘリコプターに比べ地面効果の影響は少ないですが、離着陸は速やかに実行しましょう。
②飛行
飛行経路において人や物件との必要な安全距離を確保。
緊急着陸地点の安全確保方法を飛行前に検討しましょう。
自動帰還時の高度を障害物等が回避できる安全な高さに設定することも大切です。
一等|リスク軽減策を考慮した飛行計画の立案
①離陸及び着陸
離陸地点は機体と操縦者・補助者の距離を3m以上確保しましょう。
またドローンの説明書に推奨距離が記載されている場合、それに従いましょう。
DJIの小型空撮機であれば、3mの距離で十分ですが、マトリスや農薬散布機など大型ドローンの場合、3m程度の距離だと厳しいです。
離陸地点は周囲の物件から30m以上離すことができる場所を選定しましょう。
もし30mの距離が確保できない場合は、補助者を配置するなどしましょう。
飛行
飛行経路での最高飛行高度の設定を行いましょう。
DJIなど最高高度の設定をアプリ画面から行うことができます。
DJIドローンのアプリの使い方
DJI空撮機は万が一のノーコンに備え、自動航行の高度を決めることができます。
周囲の障害物よりも高い高度を設定することで安全に帰還させることができます。
万が一の飛行中断やトラブルに備え、緊急着陸地点を事前に用意しておきましょう。
余裕のある飛行エリアを作ることでトラブルに対処しやすくなります。
プロペラガードの有無
プロペラガードは機体の保護・人や建物への接触時に与える被害を軽減する役割があります。
プロペラガード等の安全装備がない場合、第三者の立入りを制限できる場所の設定か、補助者の配置をしましょう。
ただしプロペラガードを装備する分、機体の面積が大きくなるため、風の影響を受けやすくなります。
何が何でもプロペラガードを装備することが安全な運行につながるわけではありません。
様々な現場を経験して、適切にプロペラガードを始めとした装備の選定を行えるようにしましょう。
操縦者の装備もチェック
操縦者自身も必要に応じてヘルメットやゴーグルなど保護具を装備しましょう。
「2.2 安全な飛行の確保」でドローンの安全運用について詳しく解説しております。
飛行機型のドローンの特徴
飛行機型のドローンについては以下の記事をご覧ください。