無人航空機:ドローンの機体の種類と特徴について(二等ライセンス座学)
この記事は「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の「4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)」についてわかりやすく解説した記事になります。
無人航空機と一口に言っても、様々な種類があります。
大きくは以下の3つに分類されます。
- 回転翼航空機:マルチローター
- 回転翼航空機:ヘリコプター
- 飛行機
マルチローター型とヘリコプター型は、垂直離着陸や空中でのホバリングが可能という特徴があります。
対する「飛行機型」は、垂直離着陸やホバリングはできません。
しかし飛行機型は他2種と比べ、飛行速度が速く、エネルギー効率が高いため、長距離・長時間の飛行が可能という特徴があります。
さらに、回転翼航空機のように垂直離着陸が可能で、巡行中は飛行機のように前進飛行が可能となる、両方の特徴を組み合わせたパワードリフト機もあります。
回転翼航空機(マルチローター)
①機体の特徴
マルチローターは上昇・降下や前後左右移動、ホバリングや機体を水平回転させることが出来ます。
360度自由に空を飛び回ることができるのが特徴です。
大きなエネルギー消費により、複数のローターを高速回転させ揚力を得て飛行します。
風の影響を受けやすく飛行の安定性を高めるため、フライトコントロールシステムでローターの回転数を制御し、機体の姿勢や位置を安定させています。
操縦は送信機に備わるコントローラーを操作して行います。
ローターの数によって呼び方が変わる
機体 | プロペラ枚数 | 名称 | 大きさ | 飛行の安定性 |
4枚 | クワッドコプター | 小型 | 普通 | |
6枚 | ヘキサコプター | 中型 | よい | |
8枚 | オクトコプター | 大型 | より良い |
- 4枚羽:クワッドコプター
- 6枚羽:ヘキサコプター
- 8枚羽:オクトコプター
みんなにとって一番見慣れているのが4枚羽のドローンですよね。
羽の枚数が多いほど、飛行の安定性はアップしますが、その分大型化&コストアップします。
メンテナンスの手間も増えます。
マルチローター型の飛行原理
- スロットル:上昇・降下
- ラダー:機首方向の旋回
- エルロン:左右移動
- エレベーター:前後移動
マルチローターを操縦する際に、機体の動きを指示するために用いられる用語として上記のものがあります。
マルチローター型のドローンの飛行原理については以下の記事で詳細に解説しています。
特徴|自由度が高いので空撮が得意
実際に私が空撮した石垣島の映像です。
現在最も主流なマルチローター型ドローンですが、自由度が高いため、空撮機として非常に重宝されています。
大型機(重量25kg以上)の特徴
- 全てのサイズやモーターパワーも大きくなり、飛行時の慣性力も増加、上昇・降下や加減速などに要する時間と距離が長くなる。
- 地面効果等の範囲が広がり、高度な操縦技術を要する。
- 騒音も大きくなる。
マルチローターの最大離陸重量25kg以上の大型機の特徴としては、上記の通りです。
最近では人が乗れるようなタイプも商用化しはじめてますね。
マルチローター型ドローンの運用方法はこちらの記事をご覧ください。
回転翼航空機(ヘリコプター)
①機体の特徴
回転翼航空機(ヘリコプター)は、垂直離着陸、ホバリング、低速飛行が可能です。
しかし大きなエネルギー消費がともない、風の影響を受けやすいです。
現在では手乗りサイズ、室内でも練習できるタイプも売ってるんですよ。
価格は5000~10000円程度で購入できます。
②ヘリコプター型とマルチローター型の違いは?
同じ回転翼航空機の「ヘリコプター型」と「マルチローター型」で比べると、
ヘリコプター型は1組のローターで揚力を発生させるため、回転翼航空機(マルチローター)に比べローターの直径が大きく、空力的に効率良く揚力を得る事が出来ます。
回転翼航空機(ヘリコプター)においては以下に示すような機構が必要です。
- ローターの回転面を傾けたり(機体を前後左右に運動させる場合)、ローターピッチ角を変えたり(上昇・降下させる場合)するために必要な機構(スワッシュプレート等)
- ローターの反トルクを打ち消したり、向き(ヨー方向)を変える操縦に用いたりするテールローター
とりあえず操縦はヘリコプター型の方がマルチローター型より難しいです。
③大型機(重量25kg以上)の特徴
最大離陸重量25kg以上の大型機では慣性力が大きく操舵時の機体挙動が遅れ気味になります。
そのため特に定点で位置を維持するホバリングでは早めに操舵することが必要となります。
また一般的に小型の機体よりエンジン騒音やローター騒音が大きくなります。
ヘリコプター型ドローンの運用についてはこちらの記事をご覧ください。
飛行機型の無人航空機
①|機体の特徴
飛行機は回転翼航空機と比べ高速飛行、長時間飛行、長距離飛行が可能です。
しかし安全に飛行できる最低速度が決められており、それ未満での低速飛行ができません。
水平離着陸には広いエリアが必要であり、高度な操縦技能と飛行制御技術が必要になります。
一方、適切な機体設計によって無操縦・無制御でも飛行安定が達成できます。
飛行機は、翼に揚力を発生させて自重を支えることができるのが特徴です。
また仮に故障で飛行中に推力を失っても滑空飛行状態になれば、すぐには墜落しないというメリットもあります。
このため少ないエネルギーで飛行し、長距離飛行が可能です。
エレベーター(上下ピッチ方向)、エルロン(左右ロール方向)、ラダー(左右ヨー方向)、スロットル(推進パワー)の複合的な操縦で飛行します。
広い滑走路が必要
離着陸には機体のサイズに合わせた滑走路が必要になります。
滑空するため墜落、不時着する場合の落下地点を狭い範囲に抑えることができません。
他2種はその場で飛び立つことができますが、飛行機型は厳しい場合が多いです。
空港でも飛行機が離着陸するのに、とても長い滑走路が必要ですよね。
推力により前進し空気を掴み揚力が生まれるので、回転翼航空機とは違いホバリングや後退、横移動はできません。
横方向の移動はバンクターン(旋回)で行います。
姿勢安定装置を使用しない場合は旋回はエルロンとエレベーターの複合である過度の低速飛行や過度の上昇角度、過度の旋回半径小により翼面から空気が剥離する失速という状態に陥ることがあります。
失速時は舵の操作が効かなくなる。
これは飛行機にとって極めて危険な状態です。
失速を回避するためにも操縦には高い技能が求められます。
特に技能が必要なのは手動操縦における離着陸です。
離着陸含めて自動飛行を行う場合は、発射装置や回収装置などの地上設備が必要となる場合があります。
(2) 大型機(最大離陸重量25kg以上)の特徴
大型機(最大離陸重量 25kg 以上)は主翼面積が大きくなるため、よりペイロード(積載可能重量)を大きくすることができます。
ガソリンエンジンなど推進動力の選択肢も広がるのでより長距離・長時間飛行も可能です。
25kg未満の飛行機に比べて風の影響も受けにくくなります。
大型機は、事故発生時の影響が大きいことから、操縦者の運航への習熟度及び安全運航意識が高いことが要求されます。
大型機は機体の慣性力が大きいことから、増速・減速・上昇・降下などに要する時間と距離が長くなるため、障害物回避には特に注意が必要です。
緊急着陸地点の選定も小型機より広い範囲が必要となります。
飛行機型ドローンの運用方法の注意点は以下の記事をご覧ください。
「5.2.1 離着陸時の操作」「6.3.1 飛行機」をわかりやすく解説した記事になります。